大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和58年(ツ)43号 判決

上告人 竹波謙蔵

被上告人 国 ほか一名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

一  上告人の本件上告の理由は、別紙上告理由書記載のとおりである。

二  上告理由第一について

境界確定訴訟は、いわゆる形式的形成訴訟であつて、その判決により確定、形成された境界は、第三者も争うことはできない(対世的効力又は反射的効力のいずれによるにせよ)と解される。本件において、所論の前件訴訟は、上告人所有の甲地と被上告人国井所有の乙地との境界確定に関するものであるから、その判決は、当該境界自体については前示効力を有するものの、上告人所有の甲地と被上告人国所有の丁地との境界確定に関する本件訴訟(これを前提とする上告人と被上告人国井との間の土地所有権確認訴訟を含む。)における当該境界の判断を拘束するいわれはなく、このことは、本件のように甲地・乙地・丁地がT字形に接し、各境界が一点に交わる関係にある場合も異なるものではない。このような場合、各判決によつて、三筆の土地のそれぞれの境界が、特にその集中する付近において不合理を生ずることがありうるとしても、境界争訟について特別の規定がない現行法制上、やむをえないところというべく、これを回避するためには、甲地所有の上告人は、乙地所有の被上告人国井及び丁地所有の国を相手に甲乙地及び甲丁地の各境界を同一訴訟で同時に確定するほかなかつたというべきである。この点に関する上告人の主張は採用することができず、原判決に所論の違法はない。

三  上告理由第二について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

四  よつて、本件上告は理由がないから、民事訴訟法四〇一条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小堀勇 吉野衛 山崎健二)

上告理由

第一 原判決は、すでに確定している東京地方裁判所昭和四二年(レ)第三四号土地境界確定等請求事件につき言渡された判決(以下前件訴訟判決という)の効力に抵触するものである。

一 前件訴訟判決は、上告人と被上告人国井敏雄間における甲地と国井所有の東京都板橋区板橋四丁目八六三番四の土地(以下乙地という)との境界を確定する訴訟につきなされた判決であるが、丁地の管理者であり、この付近の国有地を管理し、国有地を上告人等に売却払下するについて実測調査した大蔵省関東財務局王子出張所(以下関財という)の係官であつた村田勇蔵・正野哲男等の証言の結果並びに正野哲男作成の境界確定及び実測求積図(甲第一一号証・乙第六号証の三)等を参酌して、甲地と乙地の境界は、図面Z点とZ点とS点を直線で結んだ七・三六メートルの地点であると認定したのである。

二 原判決は、前件訴訟で問題となつた当事者及び対象土地を異にするから、前件訴訟判決は本件を拘束するものではないとして、図面Z点より甲地に喰込んだホ点を甲地と乙地の東北隅の境界接点としたのであるが、これこそ前件訴訟判決が確定した境界点と異なる認定というべきであつて、まさに確定判決の効力に抵触するところである。すなわち甲地・乙地・丁地の三つの土地が一点に交つているところは甲地の東北隅・丁地の西北隅であつて、この地点について前件訴訟判決ではZ点であるとし、原判決ではホ点としたわけである。当事者並びに対象土地が異なるといつても、前件訴訟では被上告人国井が当事者となつており、しかも三地の合する地点は一点であつて、その部分においては合致する土地である。しかも前件訴訟では被上告人の国が当事者になつていなかつたが、関財関係者は、もと国有地であり、上告人に売却払下げするにつき実測調査をした土地で、将来丁地を被上告人国井に売却払下げをする予定でいたため、前件訴訟の結果に多大の関心を持つており、実測調査をした関財元係官村田・正野両名が証人として証言し、前件訴訟判決が確定した後には、関財第二課長並びに担当係員は現地に臨み、右判決が確定したところに従い甲地・丁地との国道一七号線道路沿いの境界が図面Q点であるとしたのであつた。そしてQ点から国道一七号線と垂直に北方へ三メートル延長した地点がZ点であることは、前件訴訟判決によつて明確なところであり、しかもZ点は関財において売却払下げのために実測調査をした時、関財係官正野哲男が木杭を埋設して確定したところであつた。このように、関財は、丁地の管理者であると共に、丁地の所有者である大蔵省の一機関として本件土地に関与して来たのであるから、本件訴訟は形式上被上告人国井とともに国が関与するようになつたが、その実質は前件訴訟と全く同一であつて、被上告人国井はもとより被上告人国に対しても、前件訴訟判決の効力は認めらるべきものであり、さらに被上告人国については、前記判決の効力を認めて来た反射的効果が及ぶものである。いずれにしろ、原判決が前件訴訟判決の認定するところと異なつた認定をしたことは、前件訴訟判決の効力に抵触して許されないところである。

第二 原判決の認定した事実は、証拠の採否を誤り経験法則に違反したものであつて、この認定は民事訴訟法第一八五条に違反するものである。

一 前件訴訟判決(甲第四号証)は、本件土地を含めて国有地を管理しており、払下げを担当し、現地に臨んで実態調査・実測調査に当つた関財の元職員村田勇蔵(丙第一二号証・丙第一三号証)、正野哲男(丙第一四号証)、赤芝静次(丙第一五号証)、等の各証言並びに正野哲男が実測調査に基づき関係者に払下げのために作成した境界確定及び実測求積図(甲第一一号証・乙第六号証の三)等と小山利雄(丙第七号証・丙第八号証)の証言等を詳細に比較検討し、小山証言並びに同人が作成した乙第六号証の一の図面が信用できないものであり、小山利雄が埋設したといわれる図面ホ・ヘの石杭は、正野哲男が払ち込んだ木杭と異なるところに埋設したものであるか、正野哲男が払ち込んだ木杭を被上告人国井或いはその関係者が動かしたところに小山が石杭を埋設したものであり、しかも丙第一四号証並びに甲第一一号証の記載により甲地の東側の距離は国道一七号線道路へりより北方に垂直に三・〇〇メートルあるのが正しいと認定して、甲地と丁地の境界線はZ点とQ点を直線で結んだ線であるとしたのである。

二 さらに、正野哲男は前件訴訟において、本件土地について実態調査をした状況、その実態調査については被上告人国井も立ち合つていること、測量については、上告人と西隣の浮田秀民所有地との境界で国道一七号線に接する部分を基点(図面P点)として計測したこと、そしてP点より東方に六・五八間(一一・九六メートル)国道沿いのところに木杭を打つたこと(この地点がQ点である)、このQ点より北方に垂直に一・六五間(三・〇〇メートル)の地点に木杭を打つたこと(この地点がZ点である)、丁地と甲地の境界は直線で三・〇〇メートルであること、上告人には丁地と甲地の境界線が三・〇〇メートルとし、正野等の行つた実態調査・測量に基づいて売却払下げ処分を行つたこと等を明確に証言しているのである(丙第一四号証参照)。

三 右のような状況のもとに、前件訴訟判決は傍論ではあるが、甲地と丁地の境界は図面Q点・Z点を直線で結んだ三・〇〇メートルの線であるとしたわけであるが、これはけだし当然のことであり、何等疑いを差しはさめないものであつた。

四 ところが原判決は、前件訴訟で正野証言によつて否定された小山利雄(原審における証言と丙第七・八号証)の証言と、前件訴訟時点より記憶のうすれた原審証人正野哲男の証言を採用して前件訴訟判決の認定を否定したのであるが、これは前示のとおり丙第一四号証・甲第一一号証の記載といちじるしく異なり、この証言を信用することは余りにも採証法則を誤り、裁判官の専権によるとはいえ、自由心証を逸脱したものというべきである。

五 原審において証人正野哲男は、前件訴訟において証言した内容と少しく異なる証言をしているが、この証言は証人自身前件訴訟で証言した内容の方が記憶が明らかであつたと申し述べており、しかも被上告人国が昭和五六年六月一六日付準備書面(三)の八項でホ点は動かされた疑いがあると被上告人国ですらこれを認めている。そうだとすると、乙第一四号証の記載の方が正しい事実の証言であり、ホ点が移動された点にあるということであるから、原審の小山証言並びに同人によつて作成された図面も自から否定されるべきものというべきである。

六 さらに原審証人正野は、原審並びに前件訴訟において、甲第一一号証の境界確定及び実測求積図に基づき、その図面上にDと記載されている土地を上告人に売却払下げたのだと証言している。これによれば、甲地の東側で丁地に接している境界は一・六五間(三・〇〇メートル)であり、さらにそれ以外の三辺についての数値が記載されていること図面のとおりである。ところが小山利雄作成の図面並びに原審認定のとおりであるとすると、甲地が丁地と接する部分は二・八〇四メートルであつて、いちじるしく甲第一一号証と喰い違い、しかも、ホ点・ヘ点を結ぶ線が甲地と丁地の境界であるとすると、甲地の面積は二八・〇一三平方メートルであつて、上告人が関財より払下げを受けた面積より少なくなつてしまうのである(尚甲地の登記簿上の面積は二九・〇九平方メートルである。甲第一号証参照)。この点からも、小山証言並びにその証言により真正なものと原審が認めた小山作成の図面に基づき甲地と丁地の境界を定めることは、理に沿わないものであつて、採証法則に著しく違反するものである。

第三 結び

以上のとおり、原審判決には法令違反があるので破棄の上、上告人が求めている一審判決のとおりの判決を求めるものである。

以上

〔参考〕第二審(東京地裁 昭和五五年(レ)第一二二号・一二三号 昭和五九年八月八日判決)

主文

一 原判決を取り消す。

二 東京都板橋区板橋四丁目八六一番七の土地と同所八六一番五の土地との境界は、別紙図面にホ、ヘ点として表示されている各埋設石杭の中心点を結んだ直線であることを確定する。

三 被控訴人の控訴人国井に対する請求をいずれも棄却する。

四 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一 控訴の趣旨

(控訴人国井)

1 原判決中控訴人国井の敗訴部分を取り消す。

2 主文三、四項と同旨。

(控訴人国)

1 原判決中控訴人国の敗訴部分を取り消す。

2 東京都板橋区板橋四丁目八六一番七の土地と同所八六一番五の土地との境界は、別紙図面にホ、ヘとして表示されている各埋設石杭の中心点を結んだ直線又はその延長線(ヘ点からホ点側に三メートルの点まで)であることを確定する。

3 主文第四項と同旨

二 控訴の趣旨に対する答弁

1 本件控訴をいずれも棄却する。

2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二当事者の主張

次に付加補正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一 被控訴人の主張

原判決一二丁目裏の三行目から四行目及び一三丁目表の九行目に「別紙第一図に示すQ′点とZ′点とを直線で結んだ線」とあるのを、いずれも「別紙第一図に示すQ点とZ点とを直線で結んだ線」と改める。

二 控訴人国の主張

原判決はP点が不動の基点であるとしてこれを前提に判断しているが誤りである。

関財の昭和三三年三月二五日の実態調査及びその後の杭打測量並びに小山土地家屋調査士の石杭埋設・実測測量において、基点とされたのは、いずれもR′点である。

すなわち、R′点は、昭和二七年一〇月に東京都財務局管財部測量課が、旧道路敷の境界査定を行つた際、民有地と道路敷との境界標識として埋設した鉄鋲の中心点であり、訴外瀬戸定子所有の板橋四丁目八六三番三の土地の南西端と、旧道路敷及び国道一七号線とが接する地点を示すものであつて、右鉄鋲は右東京都財務局管財部測量課作成の道路敷境界図において、○印で表示され、その両わきには前記瀬戸所有地に存在する建物の西南端の柱からの距離が〇・二八間、その西側にあつた建物の東南端の柱からの距離が〇・一九間である旨が表示されているのである。右R′点の鉄鋲は、旧道路敷の分割後、瀬戸がその一つである八六一番八の土地の払下げをうけて、これと前記瀬戸所有地とを一体として使用するようになつたため、境界標は不要と考えてこれを抜き取り、その際、八六一番八の土地と丁地との境界点に埋設したのが、イ点に現存する鉄鋲である。

第三証拠<略>

理由

一 甲地はもと控訴人国の所有であつたが、昭和三三年九月三〇日、被控訴人が払下げを受けてその所有権を取得したことは当事者間に争いがなく、控訴人国井が係争土地が甲地の一部に属することを争い、その上に鉄骨柱波板鋼板張りの工作物を構築してこれを占有していることは被控訴人と控訴人国井との間において、また控訴人国が甲地と相隣接する丁地を所有し、その境界につき争いがあることは被控訴人と控訴人国との間において、いずれも争いがない。

二 そこで、係争土地が甲地の一部に属するか否か、換言すれば、甲地と丁地との境界はどこであるかについて検討する。

1 <証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。

(一) 甲地及び丁地を含む東京都板橋区板橋四丁目八六一番三ないし八の六筆の土地は、昭和三三年以前は、稲妻状に屈折した複雑な地形をした旧道路敷(無番地)だつたものであり、控訴人国の所有地であるが実際の管理は行なわれず、所管の関財でも所在と範囲を把握しておらず、僅かに昭和二七年一〇月一日東京都財務局管財部測量課が控訴人国井の前所有者臼井からの申請により行つた官民査定の際の測量図があるのみだつた。

右旧道路敷は昭和三三年当時にはすでに道路としては使用されておらず、隣接土地所有者が事実上これを占有使用するに至つており、建物が建てられたり資材が置かれたりなどされている状態であつた。そこで、当時付近の国有財産の実態調査をしていた関財の担当係官だつた村田勇蔵及び正野哲男の両名は、右旧道路敷についての実態調査を行い、旧道路敷の国有地と隣接民有地との境界を確定するとともに、将来の分割・払下げの際の資料に供するため、昭和三三年三月二五日、被控訴人や控訴人国井らを含む隣接土地所有者立会のうえで仮杭を打つて巻尺で一応の測量をし、官有地と民有地の地境の要点数か所に仮杭を打ち(ヘ点を含む)、関係者に払下げ予定地の区割の大綱を説明したが、その際参考とされたのは、昭和二七年一〇月に東京都財務局管財部測量課が作成した図面(<証拠略>)を正野が写した図面(<証拠略>)であつて、右測量の基点も、東京都の図面において八六三番三の土地に存する瀬戸定子所有の建物の西南端及びその西側の建物の東南端からの距離がそれぞれ〇・二八間、〇・一一間である旨が示されていた旧道路敷と国道一七号とが交差する地点に埋設されていた鉄鋲であつた。そして、正野は右測量の結果に基づき「境界確定及び実測求積図」(<証拠略>)を作成した。しかし、正野が作成した右図面による旧道路敷の区画割では控訴人国井の出口が狭いということで了解が得られなかつたので、同年五月頃、再度正野は現地で払下げ地の区割りについて意見調整を行い、一応関係者間で了承されたので、区割りの要点数か所に木杭を打ち(ホ点を含む。)、同月二一日、関財は被控訴人、控訴人国井ら隣接土地所有者からさきの区割りに基づいて払下げがなされることに異論がない旨の承諾書(<証拠略>)を徴し、正野はさらに右区割りに基づいた「境界確定及び実測求積図」(<証拠略>)を作成した。

(二) その後、関財は旧道路敷を隣接地主に払い下げる準備として地番設定並に台帳登録地成申告をするために、右「境界確定及び実測求積図」に基づき、専門家である小山利雄土地家屋調査士に旧道路敷の測量と境界標としての石標の埋設をさせることとし、同年六月三日、右小山は被控訴人、控訴人国井ら隣接地主立会のうえさきに正野が地境の確認と地割りのために打つておいた前記仮杭の位置に石杭をこれに代えて埋設したうえで旧道路敷の測量と右各地点に埋設した石標間の距離を測定し、これにしたがつて各区画の面積を算出し、測量図(<証拠略>)を作成した。そして、関財は同年八月六日、東京法務局板橋出張所に対し、小山作成の右測量図に基づき、旧道路敷について東京都板橋区板橋町六丁目八六一番三ないし八の六筆の地番設定並に台帳登録地成申告を行い、同月一三日には大蔵省名義での各所有権保存登記が経由され、その結果、甲地には八六一番五、丁地には八六一番七の各地番が付された。

(三) その後、旧道路敷はさきの協議どおりそれぞれ隣接土地所有者に払い下げられ、甲地は昭和三三年九月三〇日、被控訴人との売買契約により代金二六万八四〇〇円で払い下げられ、その範囲は八坪八〇で契約書に添付された小山作成の測量図によることを被控訴人は了解した。

2 右認定のとおり、甲地と丁地はいずれも昭和三三年八月一三日、旧道路敷であつた無番地の国有地について、控訴人国が払下げに備えて六筆に分けて地番設定並に台帳登録地成申告をして大蔵省名義の所有権保存登記が経由された結果生成した土地であつて、右申告の際用いられたのは、小山土地家屋調査士が同年六月三日、関係者立会のうえで石杭を埋設してこれを測量した結果を記載した測量図であり、右事実に徴すれば、甲地と丁地との境界は、小山の埋設した石杭によつて解定されたものというべきである。

3 そこで、別紙図面のヘ、ホの各点には、いずれも右各点を中心とする石杭が埋設されているので、これらの石杭が前記の小山の埋設した石杭と同一か否か、またこれらが小山の埋設した後に移動されていないかどうかについて検討する。

<証拠略>(前件訴訟の検証調書)と原審における検証の結果によると、右各石杭は、甲地と丁地との境界付近に存し、通常境界を示す重要な標識とみられるものであり、その附近には他に境界を示すべき界標等が存しないし、さらに<証拠略>により認められるヘ点、R′点、瀬戸所有建物の南西端の距離関係が小山作成の測量図とほぼ正確に一致することなどに照らせば、右各石杭が埋設後移動されたことを認めるに足りる的確な証拠のない本件においては、右各石杭は小山の埋設した石杭であつて、甲地と丁地との境界を示すものであると解すべきである(なお、<証拠略>によると、前件訴訟の境界確定事件の判決は、控訴人国井が石杭を移動させた疑いがある旨認定しているが、本件記録では右控訴人が石杭を移動させたと認めるに足りる的確な証拠はない。)。

もつとも、鑑定の結果によれば、別紙図面のR′・ホ、チ・ヘ、R′・ホからヘ・チへの垂線等について、小山作成の測量図に記載されている数値とは相当の差異のあることが認められるが、前記認定のとおり、昭和三三年当時は旧道路敷はすでに隣接土地の所有者によつて占有使用されるに至つており、相当の障害物があつたのであり、国道一七号に面した地点間の測量が容易であつたのに対し、内側の土地の各地点についての測量は困難であつたものと認められるから、右数値の差異の一事をもつて、前記認定の妨げとなるものではない。

3 右のとおりとすれば、甲地と丁地との境界は、別紙図面のホ、ヘの各石杭の中心点を結んだ直線であると認められる。なお、ホ点は前件訴訟において甲地と乙地との境界として確定されたZ点と異なる点であることは明らかであるが、前件訴訟と本件訴訟はその当事者及び対象土地を異にするものであるから、前件訴訟の確定判決が本件を拘束するものではなく、右認定を妨げるものではない。

三 そうすると、係争土地は丁地に属するものというべきであつて、これが甲地の一部であることを前提とする被控訴人の控訴人国井に対する請求はいずれも失当といわざるをえず、また、被控訴人の控訴人国に対する請求については、前述のとおり、甲地と丁地との境界を別紙図面のホ、ヘの各点に埋設されている各石杭の中心を結んだ直線であると確定すべきである。

よつて、右に判示したところと異なる原判決はこれを取り消し、被控訴人の控訴人国井に対する請求はいずれも棄却することとし、被控訴人の控訴人国に対する請求については右のとおり境界を確定することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡田潤 北山元章 佐村浩之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例